時間の概念を取り入れた検索アルゴリズム
2005~2007年にかけて進化したGoogleアルゴリズムの中でも特筆すべき点は、GoogleがWebページ(サイト)「時間」の概念を取り入れ評価対象に加えたことだ。最も有名なものとして、Webサイトが開設されてからの時間経過によって検索順位が変化する「エイジングフィルタ(Aging Filter)」が挙げられよう※1。
エイジングフィルタとは、新規に取得したばかりのドメインでWebサイトを開設した場合、そのWebサイトに実装した検索エンジン対策の度合いにかかわらず、開設から3~6ヶ月は関連したキーワードで検索しても検索上位に表示されない現象を指す。
「新規に取得したばかりの~」という断りを入れたが、ドメイン自体はずっと昔に取得していた場合でも同現象に陥ることがあるし、逆に新規に取得したドメインでWebを開設しても現象が発生しない場合もある。つまり現時点でもエイジングフィルタのメカニズムは明確にはなっていないのだが、少なくとも米Googleエンジニア・Matt Cutts氏は一般に私たちがエイジングフィルタと呼ぶ現象を招くようなアルゴリズムが存在することは公に認めている。また、同現象の報告は世界中で相次いでいるエイジングフィルタ相当の現象が発生すること自体には間違いがない。
エイジングフィルタはPageRank不正操作の対抗策
エイジングフィルタが導入された背景は次の通りだ。
よく知られているようにGoogleのPageRank(ページ・ランク)アルゴリズムはWebページに張られたリンクの数やその質によってページの重要度を判定するための技術。ところで、このPageRank理論は単純化すれば「多数のWebページから多数のリンクを張り付ければよい」わけであり、格安レンタルサーバ会社を利用することで人為的に評価を無限に高めることができる。つまり、ドメイン1つ数百円、Webサイトも年間で1000~2000円程度で開設できるというWeb開設コストが低価格化している今日においては、資金のある企業はもちろん、個人レベルでも数百単位のドメインを取得して多数のWebサイトを開設して、それらのWebサイトから検索上位に表示したいWebサイトに向けて多数のリンクを貼り付けてしまうことでPageRankを簡単に不正操作することができる。。
新たなビジネスを展開するために新規にWebサイトを立ち上げても、こうした手法で開設と同時に多数のリンクを貼り付けることでサービス開始当日から多数のキーワードで検索上位に表示してしまうことが可能となる。
こうしたSEOマーケッターによる不正なリンク評価の操作に対抗するための1つの措置として位置づけられているのがGoogleのエイジングフィルタだ。一定期間の間の評価を無効にしてしまえば先述の手法は効率性が悪くなるため、同行為を抑制することが可能になるからだ※2。
エイジングフィルタによって「新規に立ち上げたWebサイトは時間が経過するまでWebサイトの上位に表示することはできない」が、困ったことにこのルールは全てのWebサイト※3に適用されてしまうため、最初の数ヶ月間は検索エンジン(自然検索)からの誘導が見込めないことだ。
新規にウェブサイトを開設する時の注意点
このため、新規取得ドメインで新たにWebサイトを開設した場合、次のことに注意する必要がある。
1. Webサイト開設(サービス開始)日まで数ヶ月の余裕があり、かつドメイン名を先に決定できるのであれば、まずドメインを取得して簡単なコンテンツを1ページだけ用意して公開し、検索エンジンにクロールさせておく
2. ドメインを先に決定する、例え1ページでも開設準備が不可能であれば、最初の3~6ヶ月はSEOによる誘導ができないという前提のもとでサーチキャンペーンを組み立てる(つまり、検索連動型広告の積極的活用を検討する)
3. エイジングフィルタはサブドメインやディレクトリ単位など、既存ドメイン上であれば適用されないので、特別な理由がなければサブドメインやディレクトリ単位でWebサイトを開設する。平行して新規ドメインも公開だけしておき、時間経過とともに新規ドメインに移設する。(この方法はサイト移設などの作業が発生するため、あまりお勧めはできない)
■ 注釈
※1 エイジングフィルタは2006年12月31日時点でGoogle特有の現象であり、Yahoo!、Live Searchは無関係。
※2 エイジングフィルタだけではスパム行為の抑止にはならない。これは後述するその他の数々のアルゴリズムの改良との組み合わせで効果を発揮する
※3 冒頭で触れたように、全てのWebサイトに適用されるわけではないが、メカニズムが判明していない以上、「全てのWebサイトにエイジングフィルタが適用される」という前提でSEOの戦略を考える必要がある
執筆:渡辺隆広
本文は2007年3月1日時点のものです