SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

将来のSEOの為にGoogle+に「今」投資する価値をどう判断すべきか?

年初に「SEO担当者が知っておきたい、Google検索とGoogle+の関係」という記事を公開しました。インターネット検索技術の進化・発展の方向性を考慮すると、世界最大の検索会社が Google+ という自社運営のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)をどのように絡めてくるのか、そして検索全般にどのような影響を及ぼす可能性があるのか、動向を注視していく必要があったのです。

ところが今年は Google+ まわりで幾つかの大きな動き・変更があったことで、SEO担当者視点で考える Google+ の扱いは再検討を行う必要が出てきました。

私は今年、何度か北米と欧州へ出張をしたのですが、その時に Google+ と検索エンジン対策との関係をどのように捉えているのか聞く機会がありました。その当たりの情報も踏まえて、ここ日本国内において2015年以降にどういう姿勢・認識で Google+ を扱えば良いのかを考えてみたいと思います。

結論:将来の投資として(≒暇ならやれば?)

SEO以外の観点からGoogle+に取り組むべき正当な理由がある場合 --- 例えば、飲食店や宿泊施設等で、Google+ローカルページに興味関心がある場合や、ソーシャルを通じたマーケティングに力を入れていて、ユーザー交流やエンゲージメント構築の更なる推進のために Twitter や Facebook、Pinterest に加えて Google+ にも取り組むことで事業成果が伸ばせるような場合 --- それは自らのマーケティング戦略に基づいて意志決定をすれば良いだけの話ですから、本稿での検討対象から外します。

ここでは、検索エンジンからの自然流入が非常に重要である会社のSEO担当者が、現在〜将来の SEO の為に Google+ をどう位置付けておけば良いのかにフォーカスをします。そういう前提で先に結論を述べておくと・・・

  1. 一般的な企業のSEO担当者:不要
  2. リソースが豊富/業務がヒマ/趣味なんですという場合:将来への投資としてどうぞ(≒ヒマつぶしにどうぞ的なニュアンス)

仮にいま、私がどこかの(日本国内の)事業会社のSEO責任者であれば、その業種業態や規模を問わず「いらない」と即決をするからです。他のもっと有効な施策にリソースを費やします。

以下、その背景や理由について、述べていきます。

2014年に起きた Google+ と検索まわりの出来事

冒頭で紹介した年初の記事内で、私は Google+ と検索の関連付けについて書いています。指摘したポイントは次の通りです(抜粋)。

  1. Google Search Plus Your World (SPYW)で個別化される検索結果
  2. Google+(ページ)への投稿もウェブページ扱いでインデックス
  3. Google+投稿に含まれた発リンクも検索順位の参考に
  4. Google+プロフィールページ(基本情報)の扱い
  5. Authorship(オーサーシップ)による著者情報の表示
  6. Google Local Carousel(カルーセル)とGoogle+
  7. Googleローカル検索とGoogle+

1つずつ現在の状況(2014年12月時点)をまとめていきます。

1点目の SPYW 回りはそれほど大きな仕様変更がありません。サークルに追加(フォロー)しているGoogle+ユーザーやページの投稿が、オーガニック検索結果内に表示されるようになります。サイト担当者から見ると、フォローしていないユーザーにリーチすることはできないという意味にもなります。

2点目のウェブページ扱いで Googleインデックスに登録されることも同じです。Google+の投稿という特別な意味ではなく、単なるウェブページ扱いになります。Bing や Yandex 等、Google 以外の検索エンジンにもインデックスされます。

3点目「Google+投稿に含まれた発リンク」は仕様が変わりました。まず、Google+に投稿する全てのページへの発リンク(アウトバウンドリンク)に nofollow ※ が自動的に加えられるようになりました。たとえば、外部リンクを稼ぐためにコツコツと順位を上げたいページを投稿しても検索結果には一切反映されません。ただし、SNS運営者である Google自身が、この(nofollowが加えられているとはいえ)Google+に投稿されたページを内部的にどう扱い処理しているのか、詳細は明らかにされていません(この辺りの事情は後述)。

※ nofollow(ノーフォロー):検索エンジンは一般に、ページ(X) からページ(Y)に向けてリンクが張られた時に、X から Y への支持投票と解釈して一定の評価を Y に対して与える。こうした評価の集計が、各々のページの検索順位を決定する際の判断材料として用いられる。nofollow が加えられたリンクは、この X から Y を支持投票とみなさない(ランキングの検討材料から外す)という判断がされる。cf. 検索大手各社、ブログコメントスパム対策 nofollow を発表

4点目「Google+プロフィールページ(基本情報)の扱い」も仕様が変わりました。2014年1月時点でプロフィールのリンク欄に記載したものについては nofollow がつかない仕様でしたが、2014年12月現在は nofollow がつきます。他の欄は従来から nofollow が記述されていましたから、プロフィールページをリンク発信源として利用する意味はゼロになりました。こうした仕様変更が行われたのは、特に欧米でそのリンク欄をSEOのために悪用するユーザーが後を絶たなかった為と推察されます。

5点目「Googleオーサーシップ」は8月に終了が発表されました(関連:Google、Authorship (オーサーシップ)提供中止を発表)。現在は著者プロフィール写真が、その著者が執筆したページに検索結果で表示されることはありません。

話は脱線しますが先日、某SEO会社が「2014年はAuthor Rank(オーサーランク)の終了」があったことを振り返っています。しかし、終了したのはオーサーシップであってオーサーランクではありません。また、過去にオーサーランクなるものが発表された事実すらありません。「オーサーシップ」はWebサイトとGoogle+プロフィール(≒人)を紐付けることを表すことを指し、「オーサーランク」は著者属性情報に基づいてウェブページのランク付けを試みる仕組み」一般を指します(関連:オーサーランク(AuthorRank)議論の背景と将来の可能性)。ところでオーサーランクという言葉は Google 公式ではありません。オーサーランクのようなものを In-depth articles で利用していることは明らかにされているものの、詳細な内容は不明ですし、それは終了していません(関連:Google、人物の権威性に基づいて検索順位を決定していることを明らかに Author Rank)。

話を戻して6点目、「Google Local Carousel(カルーセル)」も状況が変わってきました。11月頃、同社は飲食店や宿泊施設のカルーセルを中止してしまったのです(関連:米Google、宿泊施設、飲食店などのローカルカルーセル表示を中止)。従って、本観点から検討する意味は失われました。

最後の7点目、Google+ローカルページについては特に変更ありません。

現状況を確認したところで、SEO観点から検討したい立場の人間として、検討すべきポイントをまとめて見ましょう。

  1. Google+ページ(ユーザーアカウント)のフォロワーに対して、自社情報の検索による見つけやすさを高められる。但しフォローしてくれたユーザー限定である。
  2. 検索クエリとマッチした時に、Google+ページの投稿へのリンクが自然検索結果に表示されることがある。ただし、それ自体に意味があるかは疑問。
  3. 全てにnofollowが加えられた以上は、一般的なリンク解析系のアルゴリズムには影響しない。ただし、SNS の Google+ として Google がどう内部で扱っているか不明。
  4. ローカルページとしての Google+ は従来と変わらず。

最後の4点目は、SEO以外の論理で決定すべき判断材料なので、除外をします。

1点目は、フォロワーが数千人〜数万人規模でいれば、自社が発信する情報を彼ら(サークルに追加している位だから少しくらいの関心はあるのでしょう)に検索を通じて届けやすくすることができます。ただしフォロワー数次第であり、それは Google+ というプラットフォームの人気度を考慮して検討すべきです。

2点目、Google+のみに投稿するコンテンツが豊富であれば、その投稿リンクが自然検索結果に表示されることにも意味があるかもしれませんが、これまた Google+ の人気度に依存するものです、つまり不人気な場所にユニークなコンテンツをわざわざ投稿するのかという根本的な問題があります。

新規に公開したウェブページへのリンクを告知するGoogle+の投稿が検索にヒットしても意味はありません。なぜなら、その投稿がヒットするようなキーワードならば、その告知したウェブページ自体が検索結果に表示されているはずだからです。

3点目、全てのリンクに nofollow が加えられる以上、直接的にランキングには影響しないでしょう。ただ問題は、Google+ は Google が運営する SNS のため、裏側で特別な処理がされているかもしれない可能性が否定できないことです。ここが論点となります。

SEO観点からのGoogle+推進の是非 賛成派vs反対派

ここで欧米の事情を見てみましょう。「ゴーストタウン」(人がいない、廃墟)と揶揄される Google+ ですが、それでも絶対的な英語人口が多いこともあり、日本と比べればまだ賑わっている方です。そういう事情において、(検索エンジン対策視点で見る)Google+ の活用には賛成派と反対派がいます。色々な意見がありますが、おおよその論点は次の通りです。

  • 賛成派の意見:様々な実験やデータに基づくと、Google+ から発される様々なシグナル(順位決定の参考に使うてがかり、ヒント)が自然検索順位に影響している可能性がありそうだから。

  • 反対派の意見:ゴーストタウンに投資する理由を見いだせない。仮に SEO に影響があるとしても、Google+へ投資した見返りに得られる自然流入増加数が不明であるし、そこまでSEOに依存しているわけではない。

論点がずれるためGoogle+そのものの詳細な分析への言及は控えますが、「様々なシグナル」というのは、ざっくり説明すると例えば、会社や製品などのブランド認識(セマンティックやエンティティに関係する話)、投稿者のエンゲージメントやレピュテーションに基づいた投稿とそのリンクの評価といったことです。要は、Google+を積極的に活用すると、巡り巡って色々な場面でSEOに貢献することがあるというのが賛成派の意見です。実際、英語圏での実際のテストデータを見ると、確かに何らかの関係性がありそうだと認められるものがあります。

一方、反対派(消極派)は「ゴーストタウン」「Google+ の終わりへのカウントダウンが始まっている」という意見です。人間がいないところに SEO のためにソーシャル活動をすることは投資に合わない、という理屈です。Twitter, Facebook, YouTube, Instagram, Vine, SnapChat, Pinterest など様々な SNS があり、それぞれからトラフィックが見込める状況において、(そんなゴーストタウンへの投資を通じて)自然流入を増やすというアプローチが正しいのか疑問だということです。

両者の意見を聞いていて感じることは、「賛成派は検索技術そのものしか見ていない」「反対派はビジネス視点での資源配分の最適化視点で考えている」という点です。

SEO観点から Google+ に取り組むべき理由が弱い?

様々な実験データを踏まえますと、Google+ と Googleウェブ検索が全く関係ないということはないと思われます。一方で Google+ から得られるシグナルは単なる補完的データの1つでしかない、つまり他の手段(オンラインレピュテーションを獲得する過程を通じて)Google+ で得られるだろう評価(≒資産)と同等のものは得られるでしょう。

Google が特に公に言及しない以上は本当のところはわからないのですが、現状で判明している限りにおいては、Google+ でなければ得られないものがない以上、(活発なSNSであればともかく)今日の市場に置かれたポジショニングを踏まえますと、無理して手を出さなくていいんじゃないでしょうかというのが私の見解です。特に日本語で日本人ユーザーを相手とする公式アカウントであれば、日本語人口以上にはスケールしませんし、Facebook や Twitter、Instagram を差し置いて今後 Google+ が日本市場で人気を得るとも思えませんよね。

英語人口が多く、グローバルにスケールできる欧米においては、また少々事情が異なります。ターゲットとするオーディエンスとの相性やビジネスモデルによっては、(ソーシャル面でのバランスを考慮しても)費用対効果として受け入れられると判断する企業は取り組みますし、リソースを割かないと判断する企業もあります。ただ、SEOが好き、新しいもの好きな人は、上記賛成派の観点から半ば研究目的で取り組むケースも見られます。そういう意味で、こういう話題が大好きな担当者さんであれば、趣味的に取り組むという判断があっても良いと思います。

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