米Google・Matt Cutts(マットカッツ)氏(Distinguished Engineer)は2014年3月12日、同社の検索エンジンがいくつかの場面において著者の権威性を検索順位に反映させていることを Twitter 上で明らかにした。業界で「オーサーランク(Author Rank)」と呼ばれていたアルゴリズムが実際に(範囲や程度は不明だが)利用されていることになる[関連:SEO担当者が知っておきたい、Google検索とGoogle+の関係]。
@marktraphagen to be fair, it does come into play in some ways. For example, in-depth articles use that data, I'm pretty sure.
— Matt Cutts (@mattcutts) 2014, 3月 12
@mattcutts personally wants Google to give a ranking boost to sites deploying SSL but doesn't mean it will happen #smx
— Barry Schwartz (@rustybrick) 2014, 3月 13
Mark Traphagen (@marktraphagen)に返信する形でカッツ氏が回答した。例えば広範囲なトピックに関するキーワードで検索した時に優れたコンテンツを紹介するIn-depth articlesの選定に著作者の権威性を考慮しているという。
Author Rank と Authorship
著作者の重要性や信頼性など、著者自身の評価に基づいて検索順位を決定するアルゴリズムのことは Author Rank (オーサーランク)という用語が良く知られている。Author Rank は特許文書に記述されていた用語に基づいてSEO業界で使われている言葉であって、Google 自身が発した言葉ではない。
一方の Authorship(オーサーシップ) は Google がウェブマスター向けに公式に提供している機能で、コンテンツと Google+アカウントを関連付ける為の機能だ。Author Rank は著者に基づいて検索順位を決定する方法論という概念であり、それを実現するための道具の1つが Authorship という関係になる。本稿では業界関連に倣って Author Rank という言葉を用いる。
Author Rank 著者の評価を検索順位に反映させる理由
私たちが日常生活において、時として相手の肩書きや過去の経歴・実績に基づいて一定の評価を下しているように、インターネット検索の世界においても人物の評判に基づいた順位付けをしようという発想は決して最近生まれたアイデアではない。しかしインターネットに発信されたコンテンツの多数は匿名性が高く、そうしたアイデアが適用出来るわけではなかった。しかし、Facebook や Twitter (日本ならLINE)が生まれ、ウェブの中心がソーシャルになってきたことで状況は変わった。こうしたプラットフォーム上で生まれる人と人の交流や関係性 - ソーシャルグラフ - というデータを分析することで、1つ1つの分野や領域 - 医療、旅行、不動産、軍事、etc - において誰が信頼されているのか、誰の意見は重要視されているのかを把握できる可能性が生まれた。
Google は 自らのSNS・Google+ を立ち上げ、Google Authorship でその Google+ アカウントとコンテンツを紐付けるためのツールを用意した。さらに同社は、複数のレビューサイトを横断して同一人物であろうアカウントを紐付けて評価する技術なども投入している。
なぜオーサーランクが必要か。それは、私たちが自分の問題を解決するためのヒントや回答を得たいのであれば、もしその分野の著名人や優れた人物から提示されたコンテンツがあればそれが望まれることは多いからだ。例えばあなたが重い病気にかかったのであれば、その医療分野の権威の意見を聞けるのであれば聞きたいだろう。もし SEO において悩みが生まれたら、怪しい団体や協会のコンサルタントよりも、神様・辻氏のアドバイスに耳を傾けたいことだろう。私たちがリアルな世界における情報取得において望んでいることを検索の世界に持ち込むのがオーサーランクである。
人物評価に基づく検索アルゴリズム開発に取り組む Google
カッツ氏は昨年12月に放送された This Week In Google”Episode 227 において、同社の権威性評価の検索技術開発の取り組みについて語っている。同社は、1つ1つの領域や分野において、どのサイトが/誰が権威ある存在であるかをランキングアルゴリズムで機械的に把握できるよう試みている。例えば、ASCII Web Professionalからリンクを受けたら、そのサイトも同じくWebマーケティング系の分野において重要なサイトかもしれないだろうし、あるいは芸能関係者が共通して辻正浩氏にリンクをしていたら、辻正浩氏は芸能界で著名な人物かもしれないだろう。誰でも自由にインターネットに向けて情報発信ができるようになった今、こうした権威性という指標は適切な検索結果を提示する上で重要な指標になってきている。
Matt Cutts was on This week in Google on the Twit.TV network episode 227 Dec 4th 2013 and gave a hint of what is to come in 2014.
https://plus.google.com/u/0/+CraigMooreTech/posts/3DM1LnqYfN3
オーサーランクはIn-depth articles 以外にどこに適用されているのか?
カッツ氏は一例として In-depth articles を挙げているが、それ以外は明らかになっていないし我々(Googleの外の人間)からは検討がつかない状況だ。In-depth articles をとっても、実際に米国の検索結果を確認すると Google Authorship で関連付けられていない記事も数多く自然検索結果に表示されている。In-depth articles においてさえ、おそらく著者と情報の紐付けがなされているほんの一握りに対してだけ適用されているに違いなく、オーサーランクのような重み付けがどれだけ検索順位に反映されているかも不明だ。
とはいえ、ここまで述べてきた通り Google はこの著者の評判や信頼性を検索の世界に適用していく範囲を広げていくことは間違いなく、SEO の仕事に従事する方々はこの理屈を十分に理解してどのように自社で取り組んでいくか考えて欲しい。