SEMリサーチ

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共起語なんて概念は捨ててしまえ 時代遅れのSEO

キーワード出現率は古い概念?新しい概念?

例えば「キーワード出現率」「キーワード出現回数」というのは Google 登場前から存在する、そして最も中心的だった SEO*1 の知識です。しかし2014年の今日、SEO において最早どうでもいい知識であることは皆さんご存じかと思います。名残で、あるいは放置されたが為に現存するキーワード出現率チェックツールなるものも時折見かけますが、もはや SEO実務者にとって存在意義のない代物です。

このように検索技術のイノベーションが進み、より高度で複雑に情報を処理できるようになってくるにつれて、あるいは検索会社の方針が変更されることにより、SEO の分野でも古い、時代遅れの常識や概念、知識が次々と増えてきます。しかし(私も含めてですが)過去に書いた記事を都度削除したり手を加えて修正することなどありませんし、放置状態にしているウェブマスターも少なくありませんから、インターネットで検索をすると通用しない過去のSEOの情報は無数と存在します。本屋さんに足を運ぶと、2014年なのに、いつの時代だよそれ?的な知識をまとめた書籍が売っていることはよくありますが、その話はひとまず置いておきます。

前置きが長くなりましたが、冒頭で紹介した「キーワード出現率」の情報が古いのはとってもわかりやすいのですが、中には微妙なもの、「重要だと思われているけれども、実はどうでもいい」知識や情報というのが存在します。

 

共起語なんて概念は捨ててしまえ

その1つが「共起語」(co-occurrence)という概念です。実はこの概念が SEO の世界で語られ始めたのは、1999年頃なのです。15年も前なのです。Google が検索サービスを開始したのが 1998年ですから、相当に古い話です。そして、1999年という時代に共起語という言葉が SEO の世界で使われだしたということは、この概念は「キーワードを基にコンテンツを作成するための支援的な位置づけの概念」として登場したということです。

当時は、例えば「▲▲▲▲」というキーワードで最適化したページを作る時には、とにかく▲▲▲▲という単語を適度に、適度な量で、ページ内にちりばめることが基本中の基本でした。同時に当時からこうしたキーワード詰め込みスパムは問題になっていたので、「より自然に見せるための手法」のフレームワークとして登場したのが共起語だったのです。▲▲▲▲という言葉と同時によく利用される言葉を一緒に混ぜておけば(当時は)ほぼ100%安全だったのです。

この概念は2004年頃に(SEOの世界で)だんだんと消滅、意識されなくなってきます。というのは 2003年4月に Google がApplied Semantics という企業を買収し、そして有名なFlorida Update (2003) が行われます。この検索アルゴリズムの変更は、その Applied Semantics が有していた Circa の技術が投入されたのだろうというのが当時の専門家たちの見解です。Circa というのは、オントロジー、つまり「キリン ビール」という時のキリンは動物のキリンではなく、飲料のキリンを表すといった具合に前後の文脈から言葉を判断するもので、当時の Google AdSense のコンテンツターゲティング広告技術にも適用されています。

こうした文脈からキーワードの関連性を判断するようになってくると、現場で SEO を行う担当者は『要は、人間がその話題を話す時に当然使用するべき言葉を選択すればよい』つまり普通に文章を書け、という結論に行き着くので、共起語云々などどうでもいい話になってしまった、だから意識されなくなっていったのです。

蛇足ですが、2000年代後半でも時折、共起語をテーマにしたコラムも時折見かけましたが、基本的に(過去の歴史を知らずに)新しいと思って紹介しているか、SEO のポイントをまとめる上でそういう概念を紹介して補強している(スパムに陥らないように促している)だけでしかなかったのです。また以前、どこかの記事で「日本に初めて共起語の概念を持ち込んだ〜」などと紹介されている人物を見たことがありますが、その10年以上前、1990年代末にSEO の世界で議論されていたわけですし、情報検索(Information Retrieval)でよく知られていることです。。

コンテンツはキーワードから制作するのではない、ユーザーを見て制作するもの

とはいえ当時の Google はまだテキストベースの分析・解釈に基づいて関連性を判断するのが主でしたから、その共起語なり頻出語、類義語をベースとしてコンテンツを作成していても全然問題がありませんでした。だから実際にそういうプロセスで業務を行っていた方も多いでしょうし、少なくとも当時は、それはそれで問題がありませんでした。

しかしパンダアップデートペンギンアップデートハミングバードなど、様々な検索技術の革新を経た結果、今日の Google はどうなったかというと、端的にいえばコンテンツの品質・有用性を非常に重視するようになりました。そして、かつては理想論として片づけられていた「Content is King」が再び復活して、コンテンツマーケティングやコンテンツSEOなる言葉が登場しているように、時代は「良質なコンテンツ」に入っているのです。

ここからが大事ですが、今日の SEO の文脈(業務)においてコンテンツ制作と向き合う時の原則は「ユーザーのことを考えてコンテンツを作りなさい」です。例えばネットショップであれば、自社が扱う商材を購入したい(あるいはニーズが顕在化していない)ユーザーに、何の情報を提示することで興味を持たせ、購買意思決定を促せるのかを考えながらコンテンツを考えます。

例えばサイクロン式掃除機を検討する、あるいは何となく掃除機を買おうと思っている人を想像したら、「サイクロン式掃除機と紙パックタイプの掃除機ってどう違うの?どっちがお得なの?」というのは多くの人が悩むポイントでしょう。ならば、その比較・選ぶポイントをまとめたウェブページを作ればよいことがわかってきますし、コンテンツのトピック(話題、テーマ)が決定したら、自然と盛り込むべき情報も決まりますし、情報が決まればそれを伝達するために使うべき言葉も決まってきますよね。

 

トピックを決定すれば「共起語」で満たしたかった要件は自然と含まれる

このように、(1) トピック・テーマを決定する:ユーザーが困ること、悩むこと、知りたいことをトピックで書きだす、(2) 具体的に盛り込むべき情報の詳細を詰める、という手順を踏めば、自動的に言葉は決まるわけですし、コンテンツに注力した SEO を実行したいのであれば、こうしたトピック・テーマの決定から始めることが合理的です。

このようにトピックやテーマの選択・決定から手順を踏んでいけば、キーワードを選ぶという余地は基本的に存在しないのです。選択したトピックが使うべき言葉を決定するのです。もっとも「サイクロン式掃除機」を何と表現すべきかは検討の余地があるので、キーワード選定作業が全く不要というわけではありませんが、共起語、つまり何と何の言葉を使えばいいんだろうなどという作業は不要になってきます。「キーワードを基にコンテンツを作成する」という時代ではなく、したがってその考えの時代に出てきた(SEOの世界にとっての)共起語という発想は求められていないのです。

 

先にトピックを決めること、キーワードからコンテンツを考えない

この記事を書いたのは、コンテンツが重要であるということの意味を十分に理解せず、結局行っていることは「順位を上げたいキーワードを盛り込んだテキストを作る作業」に陥ってしまっているウェブ担当者さんが少なくないからです。先の「サイクロン式掃除機」を例にすると、このキーワードの順位を上げるために『サイクロン掃除機という言葉が入ったどうでもいい教科書みたいなテキスト』ばかり作りあげて『サイクロン掃除機を買いたい人が知りたい情報』を作ってくれないのです。

ウェブで検索すると、類義語や連想語、そして共起語などの選定支援ツールが英語や日本語含めてたくさん出てきますが、いずれも無用の長物です。ツールの多くは、指定した検索キーワードの上位50位に表示されるページでよく使われている語句を表示します的なものが多いのですが、それが有用なのは、実際に上位1位から50位のすべてが「あなたのターゲット顧客が知りたいと思う情報ばかり」である場合に限られます。現実はそんなことはありませんし、「あなたが作るべきコンテンツに含めるべき言葉」ではないのです*2

繰り返しますが、どの表記・呼称のキーワードを使うかは時として重要です。例えば最近話題の「格安スマホ」みたいな商品を購入検討する人がどういう検索語句を使うのかは十分に検討すべきであり、「ユーザーが使う言葉」を選ぶという意味でキーワード(の選定)自体は重要です。しかし、キーワードを盛り込むために、検索エンジンが好みそうなページにするためにキーワードを起点としてコンテンツ(≒順位を上げたい文字列をちりばめたテキスト)づくりというのは時代遅れであるということを認識しなければなりません。ユーザーに役立つ、有益なコンテンツを継続的に発信しましょうという今日の SEOのフレームワークにおいて、共起語あるいはよく一緒に利用する単語を選択するというその思考プロセスは不要なのです。

共起語なんて概念は知らなくて良い

SEOの世界は専門用語で溢れていますが、「知らなくてもいいこと」「ユーザーのことを考えて実行すれば必然として実現される」ことがたくさんあります。共起語の概念は正にその代表で、文章を書くときに、読み手にわかりやすいライティングを行えば必然的に『頻繁に同時に使われる言葉』は満たされるのですよ。特にパンダアップデート以後の Google の世界では、むしろ共起語などという概念は知らない方が良いと思います。

知っているからこその弊害があり、例えば共起語という概念に引きずられて無理に単語を操作してしまいがちです。「頻繁に同時に使用される言葉」(≒共起語)が必ずしもあなたがアプローチしたい見込み顧客の知りたい事柄ではないのですよ。だから題目にある通り「共起語なんて概念は捨ててしまえ」(共起語を知らないなら、学ばなくて良い)と言いたいのです。

 

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外部検索エンジンのクエリや、サイト内検索に蓄積されたクエリデータなどの「キーワード」を元にユーザーのニーズを探っていくことは良い方法の1つです。ただ、その元となった「キーワード」に囚われすぎてはいけない、その語句を必ず含むことを前提としたコンテンツ作りを行うのは適切ではない、というのが本記事の趣旨です。

 

「順位を上げたいキーワードを中心にコンテンツを作らなければいけない」と勘違いされている方が多いように感じるのです。それは「外部リンクを増やす時は順位を上げたいキーワードをアンカーテキストに入れましょう」と同じ発想で、特定キーワードの順位だけを上げようというアプローチを試みている以上は上手くいかないでしょう。

*1:1997年時点では、まだ SEO という言葉は存在しなかった

*2:そもそも共起語データはユーザーのニーズを反映しているのか?という問題もある。UGCメディアに限定してよく同時に出現する言葉を抽出するのであれば、まだ理解できる。しかし、過去に様々なブログ分析ツールを用いた経験から述べると、ノイズが多すぎて使いにくい、他の選択肢と比較すると優先順位は下げざるを得ないというのが個人的な感想。

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