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グーグル、検索結果の説明文に DMOZ 使用を中止すると発表

米Google は2017年6月2日、検索結果の説明文(スニペット、Snippets)において、DMOZ (Open Directory Project)からの引用を取りやめることを正式に発表した。

Google検索結果のスニペット作成方法

Google の検索結果の説明文(以下、スニペット)は、次の3つの方法のいずれかを利用して作成されている。

  • ページの文中から作成
  • METAディスクリプションから作成
  • DMOZ 掲載文面を引用

基本的に Google は、ページの文中から検索キーワードに関連のある前後の文脈を引用してスニペットとして利用する(Keyword In Context, KWIC)。それが最もキーワードと関連性の高い箇所である可能性も高く、検索利用者がクリックして満足する確率も高いからだ。

しかし、ページに十分なテキスト情報が含まれていないために、スニペットを作成するには適さないこともある。こうした場合は代替としてMETAディスクリプションを利用する。そして十分なテキストもなければ METAディスクリプションも記述されていない場合は、DMOZ (ODP)の掲載文章を利用していた。

今回、Google は3番目の DMOZ の掲載文を引用することを取りやめると発表した。

DMOZ (ODP) は2017年3月に閉鎖

DMOZ は 1998年に立ち上げられたボランティア方式で運営されるディレクトリ検索サイト※だ。今日は Google に代表されるアルゴリズム型の検索エンジンが主流だが、当時はまだ Yahoo!ディレクトリに代表されるディレクトリ型検索サイトの人気が高かった。

※ 20代の方はディレクトリ型検索サイトの仕組みがわからないと思うので簡単にここで解説する。Google はクローラを利用して世界中のウェブページを自動的に収集し、アルゴリズムで機械的にウェブページを評価してランク付けしていることはご存じだと思う。ディレクトリ型検索サイトは人力でサイトを集めて、適切なカテゴリに分類して掲載する方式となっている。また、Google はページ単位なのに対してディレクトリ型は(原則)サイト単位での登録となること、Google は検索対象がページ単位なのに対してディレクトリ型は(原則)サイト単位となり、検索対象とする単語もディレクトリに掲載するときのサイト名と紹介文になる。2017年現在、日本国内で身近にあるディレクトリ型検索サイトは「Yahoo!カテゴリ」程度。本家の米国版Yahoo!ディレクトリは2014年に閉鎖している

DMOZ は英語を含む世界約90言語が用意され、各カテゴリごとに担当エディター(カテゴリの編集者)を配置し、サイトの掲載を審査していた。先ほどボランティアと書いた通り、DMOZ運営コミュニティの審査を通れば誰でもなることができた。

しかしボランティアであるがゆえに、カテゴリごとに運営の品質にバラツキがあったこと、2000年代は DMOZ に掲載されることで Google自然検索順位が有利に働くと信じられていたために不正も耐えなかったなど、マイナー言語版の DMOZ はほぼスパムで埋め尽くされているなど問題も多かった。そして何より、Google に代表されるアルゴリズム型検索が飛躍的に進化し、もはやディレクトリ型検索サイトのニーズが大きく低下したことから、DMOZ は2017年3月に閉鎖し、19年あまりの歴史に幕を閉じた。

Google と DMOZの関係 古くは Google Directory

Google は2000年頃に、「Google Directory」(グーグルディレクトリ)と呼ばれるディレクトリ型の検索サービスを立ち上げた。これは先の DMOZ のデータを利用して作成されたものだ。DMOZ はそのソースデータをオープンソースで公開しており、誰でもそのデータを使ったディレクトリ型検索サイトを立ち上げることを可能にしていた(だからDMOZクローンによるウェブスパムも横行したわけだが。2005年にMatt Cutts(当時 GoogleGuy)がOPDコピーサイトの削除に言及している)。

Google Directory は2011年7月に正式に閉鎖されることになるが、こうした歴史もあって Google はスニペット作成に DMOZ の掲載文データを活用していた。

今回の発表は、その DMOZ 自体が閉鎖されたので、Google もそのデータを説明文に利用しないことを公にしたものだ。

サイト運営者は DMOZデータ引用を嫌っていた?

ウェブ業界歴が10年以上ある方にとっては「いまさら」感の強い話でもあるだろう。特に2000年代にSEOの仕事をしていた人は、Google が DMOZのデータを引用することを快く思っていなかったと思う。

先ほど触れた通り、DMOZ はボランティアがゆえに、カテゴリごとに配属されたエディター次第で品質が大きく変わる。手を抜くエディターもいて、単語を記述しただけの紹介文とはほど遠い文面を掲載しているケースもあった。たとえば2006年当時、キーワード「法科大学院」で検索すると、説明文に「法科大学院」としか書かれていないサイトが数多く表示されていた。間違っているわけではないが、役に立つとはいえないだろう。私の記憶では、ウェブ制作カテゴリの掲載サイトの紹介文がすべて「Web制作会社」だった時期もある。

また、会社名やサイト名の変更や事業内容に変化があっても、それを適宜エディターが更新をかけて反映することもなければ、サイト運営者から更新申請をすることも希だった。サイト運営者が自分のサイトが DMOZ に掲載されていることを把握していなかったり、忘れているためだ。結果として、現状にそぐわない不適切な古い紹介文がそのまま検索結果に掲載されてしまい、しかし(スニペット作成の仕組みを知らない)サイト運営者が頭を悩ませることも多かった。

Google は2006年にNOODPのサポートを開始し、DMOZ の掲載文章がスニペットに作成されることを防ぐMETAタグを用意している。同時期に Microsoft の検索エンジンも同タグをサポートした。つまり今から10年以上前の時点で DMOZ データの利用に関してサイト運営者からの不満の声は高かったわけだ。

METAタグに適切な紹介文を記述する

Google は今後について、ページ本文に十分なテキストを入れられない、入れる余地がない場合の代替策として METAディスクリプションを適切に記述するよう推奨している。ページごとにユニークな説明文を入れること、PC版とモバイル版の両方のページに記述すること、リンク先ページの内容推測やクリック率、検索利用者の満足度に影響することから、適切な内容を記述することなどだ。

Better Snippets for your Users

https://webmasters.googleblog.com/2017/06/better-snippets-for-your-users.html

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いまの20代は Yahoo!カテゴリすら知らないので、DMOZ はなおさらわからないですよね。

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