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Standard SEOシリーズ『Googleコアアップデートの読み解き方 2021年版』 発売によせて

Standard SEOシリーズ『Googleコアアップデートの読み解き方 2021年版』が発売されました。

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Standard SEOシリーズ『Googleコアアップデートの読み解き方 2021年版』



直近3年は海外出張も多く、さまざまな場所で学ぶ機会が得られたもののアウトプットをする時間が十分にとれませんでした。そろそろアウトプットするか!と考え始めたのと諸々のタイミングが重なり、執筆活動を再開したのが昨年9月頃。その成果の第1弾がStandard SEOシリーズ『Googleコアアップデートの読み解き方 2021年版』 です。

2021年版という文字は、編集者さんにお願いしてタイトルに入れてもらいました。今年は Core Web Vitals をお迎えしますし、数回の発生が予想されるコアアップデートも新しい傾向やGoogleのチャレンジが観察できるかもしれません。また、時間の都合で書き上げることができなかったトピックもあります。そういった諸々の情報をまとめて2022年版として出せるとベストでしょう(出しますとは言ってない)。

刊行にあわせまして、本書出版の背景や考えについてまとめます。

 

SEO領域を完全網羅した書籍は、断念しました

2003年に出した「検索にガンガンヒットするホームページの作り方」を完全刷新した書籍を出したいところですが、こういった全領域をカバーする書籍は断念しました。

現在のSEOを取り巻く環境をすべて考慮した書籍を制作する場合、およそ 1,000ページ(!)の情報量になると見積もっています。そして、だらだら執筆していると情報が変化してしまい書き直しが発生するため、理想は1ヶ月、おそくとも3ヶ月で書き上げるのが妥当でしょう。しかし、私はそれを処理するために必要な集中力の容量を持っていません。正確にいうと、仮にこのタスクを完遂すると、1ヶ月くらい人間活動を完全停止させる必要があるため現実的ではありません(過去に何度かそれを経験した)。

というわけで、トピックの範囲を限定して、100ページ前後程度の情報量の書籍を電子書籍で次々と出版していくという方法を選択しました。今回は、(1) 関心を持つ人が多く、(2) Googleは立場的に突っ込んだアドバイスができない領域で、(3) 勘違いしているウェブ担当者が多い・・・という3条件を満たしたコアアップデートを選択しました。

Standard SEOシリーズということなので、シリーズで次があるそうです。実は第2弾の執筆はすでに動き出しているので、きっと、おそらく、たぶん年内に出せると思います。


自分のサイトの「よい」を定義する

 よいサイトを作ろうという言葉がよく使われますが、「よい」の定義など十人十色です。ある人にとっては「よい」でも、別の人は「よい」と考えないかもしれません。同じ情報でさえ、その受け手によって評価は変わります。

たとえば、Googleの発言を都度取り上げるような記事は、SEOを学び始めた人にとっては「よい」といえるでしょう。しかし、私個人は「ノイズ」*1だと思っています。それを第三者に紹介するときは、中級者以上(ある程度SEOの基本ができている人)には参考情報源として勧めても、初心者には勧めません。こうした記事は必ずしもGoogleの考えや意図を正しく反映しているわけではないため、読者自身の判断能力が求められるからです。

このように各人、合理的(非合理的)な理由や文脈、背景に基づいて同じ情報でも「よい」の評価が変わります。深く考えると、とても難しい問題なのです。

普遍的な「よい」は存在しないので、みなさんが自分のビジネス(サイト)における「よい」を定義することから始める必要があります。それが定義できて、はじめて改善の方向性を決めることができます。しかし案外、「よい」を言語化するのは難しいのです。Webサイトのプランニングをするときに、目的や価値、機能といったビジネス関連の議論は徹底的に行っても、「よいサイト」という視点で議論することはないのではないでしょうか。

本書では汎用的な「よい」の定義を、何度も咀嚼して自分のサイトの「よい」に変換(再定義)するための方法論と具体例を紹介しています。これは私が頭のなかで瞬時に行っている思考パターンをできる限り言語化しました。自分のサイトの主観的な「よい」ではなく、客観的な「よい」といえる要件を考える助けになるはずです。

また、Google(検索エンジン開発者たち)が考える「よい」も同じく最大公約数的なもの、すなわち大多数が納得する「よい」、合理的な「よい」のコンセプトに基づいています。その価値観を表現できるようにアルゴリズムを開発します。その「よい」のなかには、彼らは私たちが持ち合わせていない(特異なものではなく、単に私たちが認識・意識していない)価値判断を考慮していることがあります。特にYMYLサイトはそれが顕著です。

本書では、2000年代のアフィリエイトサイトの扱いや、GoogleとMicrosoft Bingの関連性に対する考え方の違いなど、検索エンジンの開発・設計思想やアルゴリズムへの反映の話を踏まえながら、こうした価値観やその判断基準の話をできる限り言語化しました。

私はこうした切り口で解説している他の専門家を見たことがないので、正直、この話がみなさんにどれだけ役立つのか判断ができません。少しでも参考になれば幸いです。


本質的な問題は、SEO担当者の視野の狭さ

仮にいま、私が事業会社で新規にゼロからチームを構築するなら、インハウスSEOというグループは作らないです。それが私の答えです。

今回、執筆にあたりSEO学習者の「わからないこととその理由」を突き詰めるためにブレインストーミングを重ねていきました。その結果、現在のSEO関連業務に携わっている人の本質的な問題は、検索アルゴリズムという非常に狭い世界のなかで物事を考え、仕事を完結させていることにあると考えました。視野が狭すぎるのです。

確かに2000年代の、まだインターネット検索のアルゴリズムが未熟な時代であれば、視野の狭さは問題ではなく、ある意味、有利だったかもしれません。しかしGoogleが機械学習を全面的に導入し、各々のウェブページ評価が外部リンクの数量や品質ではなく、利用者の満足度にシフトした現在においては、その視野の狭さはデメリットが大きいのです。

検索エンジンからの集客を担う業務である以上、検索エンジンと向き合う時間が多く、必然的に視野が狭くなりがちなことはよく理解できます。かつての私もそうでした。だからこそ、私は半ば強制的に視野を広げる、狭くなってもそれを自覚して自己修正するための努力をしています。

たとえば、国内外問わず*2のSEO関係者とは一部のスペシャリスト*3を除き接触しない、広告やコンテンツマーケティング、Web解析、CRO (Conversion Rate Optimization)、B2B(B2C)マーケティング、ソーシャルなどデジタルマーケティング系のカンファレンスへの参加割合やその領域の専門家たちとの交流を増やす*4、その一方でSEO主体のカンファレンスは参加不可、インターネット検索ビジネスをよく理解している人たちとのコミュニケーションは維持する、etc.. といった、いくつかのルールを設定しています。

検索エンジンという閉じた世界で物事を考える人々との接触機会を減らすと同時に、隣接領域への興味関心を増やすことを並行して行えば、このSEO業界の多くの人が抱える視野の狭さ問題は解決できると考えました。いまのところ、上手くいっているので今後も継続するつもりです。

検索上位のページを分析して同じようなコンテンツを同じような構成でつくる、キーワード一覧からコンテンツを考える、Googleが好きなキーワードを盛り込む・・・こういった、情報を届ける相手不在の、誰でもできるような単純作業は「おかしい」「本質ではない」という感覚を持ってください。SEOの世界に浸っていたら気がつきませんが、客観的にみたら、随分と滑稽なことをしているのです。

同じように、Googleのアルゴリズムをハックする、テクニックで順位をあげる、コアアップデートで絶対に順位を下げない必勝法など、検索結果画面やアルゴリズムと向き合うその思考はいい加減に捨て去りましょう。2021年のSEOを取り巻く環境は、そういう発想でどうにかできる世界ではありません。

検索エンジンを完全に無視するという話ではありません。現状、GoogleもMicrosoft Bingも完璧ではありませんので、人(ユーザー)には伝わる情報を必ずしも同じように検索エンジンも処理できるわけではありません。だから配慮が必要です。しかし「検索エンジンを中心に物事を進める」と「検索エンジンにも配慮しつつ物事を進める」ことはまったく別の話です。前者ではなく、後者が必要です。

そんなわけで、すでに購入頂いた方、SEOに関連する本書を手にとってしまった時点で問題があるかもしれないという意識を持ってください。SEOをよく理解したいのであれば、是非、本書を読む時間など割かずに、多様な視点で自身の業務を振り返ることに時間をあててみてください。

 

追記:私が伝えたいことを簡潔にまとめていただいている。ありがとうございます。

 

*1:だいたい、Googleオフィスアワーは1年通してみると同じ質問と回答の繰り返しなんだから、2回以上質問された内容はGoogleがブログなり検索セントラルにドキュメントを掲載する、あるいはその話題だけ扱うショート動画をYouTube(かつてマット・カッツ氏がやってたようなやつ)で公開すれば済む話です。Googleですら10年経過してもそれを改善できないなんて!

*2:2020年は在宅勤務でBGM代わりにさまざまなセッションを聞き流していたので、欧米の専門家も見分けがつくようになりました。現在は特定のコミュニティに参加している人たちとの交流のみ継続しています。

*3:要するに、Webのビジネスやマーケティングの大枠のなかでSEOを語れる人のこと。完全なテクニカルSEOの領域はまた別のお話。

*4:SEOを勉強している人に並行して学ぶとよい隣接・関連領域の話は、別記事で紹介します。SEOの仕事をより楽しくするためにも、理解を深めるためにも隣接領域を学ぶことはとてもよい機会だと思います。

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