SEMリサーチ

企業で働くウェブマスター向けに、インターネット検索やSEOの専門的な話題を扱います

スマートフォンと検索エンジン 基本的なQ&A Part.I

スマートフォンが急速に普及する中、企業もウェブサイトのスマートフォン対応を進めています。こうしたなか、「スマートフォンサイトのSEOはどうするの?」という相談をよく頂くようになりましたが、よくよく話を聞いていると、そもそもスマートフォン向け検索エンジンの基本的な理解すらままならない、ひどい場合はどこかの業者や広告代理店から吹き込まれた「ウソ」を信じてしまっていることもあります。

そこで、今回はパート1として、スマートフォンと検索エンジンの基本的な知識について Q&A 形式で整理しました。これらの情報は私の検索技術に対する知見、調査、Google及びMicrosoft(Bingチーム)の公式/非公式見解、その他の情報に基づいています。

Q1) PC版Google と スマートフォン版Google に違いはありますか?

A1) 両者はユーザー・インターフェース(UI)は異なりますが、基本的な検索機能やランキングアルゴリズムは同じです。

スマートフォンは電話機能を持ち、常に携帯されているため、PCとは検索場面や用途が少し異なる場合があります。従って、たとえばあらかじめGoogleに位置情報を共有しておくと、検索結果にGoogleプレイスの情報(ローカルビジネス情報)がヒットした場合に、ワンタッチで通話ができるボタンが表示されるなどの違いがあります。

しかし、ランキングアルゴリズムで両者に違いはありません。PC版もスマートフォン版(タブレット版)も、同じ判断基準に基づいてでウェブページを順位付けしています。

Q2) スマートフォンに最適化したウェブサイトは、スマートフォン版Googleの検索結果で(PC版よりも)有利になりますか?

A2) いいえ、GoogleはPC向け・スマートフォン向けなどデバイス別に用意されたウェブサイト(ページ)を等しく重み付けしますので、スマートフォン用サイトだからといってスマートフォン版Googleで検索上位に表示されやすくなるわけではありません。

同様に、WiiやPS3でのブラウジングに最適化したウェブサイトを構築したからと行って、それらのサイトがWiiやPS3からGoogleで検索しても、順位が上がりやすくなるということは決してありません。

Q3) PCに最適化したウェブサイトは、スマートフォン向けGoogleで不利になることはありますか?

A3) いいえ。繰り返しますが、Googleはオンラインに点在する無数のウェブページについて、それがどのデバイス向けかにかかわらず、同じアルゴリズムを適用して点数化をしています。従って、スマートフォン版GoogleでPC向けサイトがスマートフォン向けサイトよりも不利に扱われることはありません。

Q4) 「PC向けサイトのみ」を用意した場合と、「PC向けとスマホ向けサイトの2つ」を用意した場合、2つのサイトを用意した方がGoogleランキングで有利になりませんか?

A4) いいえ、Googleはあるサイトがいくつのデバイスに対応していようと、あくまでドメイン(URL)単位で評価しますので、複数デバイス向けのサイトを用意したからといってGoogleランキングで有利になるわけではありません。

ただし理論上は、仮にスマホ向けサイトとPC向けサイトを全くの別ドメインで展開した場合、(繰り返しますが理論上は)2つのドメインで運営されることになるので、かりに互いが相互リンクをしたら、(しつこいですが理論上は)差がでそうですが、しかし今日のGoogleはそうした同一運営者間と考えられるサイト同士のリンクはそれほど評価しませんので、実質的なメリットは得られないと思います。

Q5) スマートフォン向けサイトしか用意していませんが、SEOはどうすればいいですか?

A5) 特定デバイスへの制限は SEO の観点からは不利になります。オンライン上でPCサイトほど十分な量のレピュテーションを構築できないからです(≃わかりやすくいうと、たとえば自然リンクが十分に得られない)。検索マーケティングを効率よく実行する観点からは、PC以外の特定デバイスへの制限を設けないことです。このあたりは米国のその手のサイトのマーケティングを参考にしていただくとよいかも知れません。実質的にスマホ向けサービスしか提供していなくても、ほとんどPCサイトも用意して、そこで検索マーケティングキャンペーンを展開しています。

Q6) タブレット版Googleとスマートフォン版Googleでランキングアルゴリズムに違いはありますか?

A6) いいえ、繰り返しますが、GoogleはウェブページがPC/スマホ/その他分け隔てなく、オンラインに点在する情報の1つとして関連性を評価しています。タブレット版とスマホ版でUI上の違いはありますが、ランキングアルゴリズム自体は同じです。

そもそも論として、GoogleはあるウェブページがPC向けなのか、スマホ向けなのか、それ以外のデバイス向けページなのかを技術的に判断する術を持っていません。従って、サイト運営者がどのデバイスを考慮してウェブページを作成したかにかかわらず、Googleはオンライン上の1つの情報として関連性を評価します。

Q7) しかし、PC版Googleとスマートフォン版Googleでは検索結果が変わる場合があります。これはどう説明されるのですか?

A7) それはGoogleが検索クエリの属性を判断して検索結果のパーソナライズ(個別化)を行っているのであって、ランキングアルゴリズム(ウェブページの重み付け・評価)の違いを表すものではありません。

具体的には、Googleはスマートフォン版において位置情報にあわせた検索結果のパーソナライズを行うことがあります。この頻度は、PC版よりもスマートフォン版の方が割合的に高くなっています。理由は先述したとおり、スマホは24時間基本的に携帯され、PCよりも外出先等、現在地に関連する検索が行われることが多いためです。

一例を示しましょう。私はいま、静岡駅近くのホテルでこの原稿を書いています。PCから「ホテル」と検索すると、1位にじゃらんが、2位以下に Googleプレイスなどでヒットした、近所のホテルを表示するローカル検索結果が数件並んでいます。一方、スマホ(今回はISW11SCを使用)で同じく「ホテル」と検索すると、自然検索の1位から10位までの合計10件がすべてGoogleプレイスから引き出された静岡駅周辺のホテル情報になり、PCで1位だったじゃらんは11位に表示されます。

これは「ホテル」が地域属性を持つクエリであること、そしてスマホはモバイル端末であるという特性が考慮されて、Googleは現在地と関連性が高い(location sensitive)、ローカルな情報を自動的に優先表示するようになっています。

一般的にスマホ版GoogleとPC版Googleは等しく同じ検索結果を表示すると考えられがちなのですが、実は地域系クエリでは検索結果が異なります。この「検索クエリがエリア属性を持つ場合、スマホ版Googleはローカル情報を優先表示する」のは米英日共通です。

その他の例としては、検索履歴に基づくパーソナライズ(PC同様)、デフォルトで使用するGoogleの違い(一部端末ではデフォルトGoogleがgoogle.comになるため)による検索結果のパーソナライズが確認されています。

※ 一部のキャリアから販売されているAndroid端末の中には、Google自然検索結果内にそのキャリアおよびパートナーが運営するサイトやアプリへのリンクを挿入する場合があります。これは別記事を参照のこと

Q8) 音声検索向けの最適化方法はあるのか?

A8) 一般のサイト運営者が現時点で特に考えることはありません。口語クエリが増えそうとか自然文検索が増えそうとか色々考えられますが、もうちょっと生活者の行動を観察してから考えても遅くありません。

Q9) カメラ撮影検索向けの最適化方法はあるのか?

A9) 一般のサイト運営者が現時点で対策できることは特にありません。将来を見据えて先に手を打っておくことはとても大切なことですが、妄想に基づく対策は時間の無駄です。もう少し検索エンジンが進化して、生活者の検索行動に変化が起きそうになってから十分に観察しても遅くありません。

以上 Part.I 終わり。

(すべて2012年3月20日時点の情報に基づく。検索結果確認に用いた端末は ISW11SC (au), L-01D (docomo), Galaxy Note (Samsung), iPhone4 (b-mobile) , iPad 2012 (WiFi)、PC など)

cf.

スマートフォン向けサイトを検索エンジンに最適化するためのポイント

SEO for スマートフォン [2] レスポンシブWebデザイン [2013/01/04]

SEO for スマートフォン [1] Google のモバイルに対する考え方 [2012/11/29]

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スマートフォンのSEO関連の情報は意外と少ないので、基本的な事柄から少しずつまとめていきます。誤解されている方が多い部分は、諄いくらいに説明しています。

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