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Google ಠ_ಠ、日本国内7つのSEO目的リンクネットワークにペナルティ(実施済)

4~6月は新卒や新任SEO担当者に配慮した記事を決めたばかりなのにすっかり忘れていました。改めて「Google、国内7つのリンクネットワークに制裁を科したことを公表」について、背景を説明します。

リンクネットワークとは

SEO業界の文脈で出てくる「リンクネットワーク」とは、任意のウェブサイトにリンクを張るために用意された、組織化されたウェブサイト群を指します。

例えば、あるサイト(www.example.com) をキーワード「AKB48」で検索上位に表示させたい時に、そのネットワーク化された1つ1つのウェブサイトに、アンカーテキスト「AKB48」、リンク先を www.example.com に設定したリンクを設置するのです。このネットワークが大きければ大きいほど、AKB48をテキストとしたリンクが増加するため、www.example.com の「AKB48」検索時の順位を上昇させる可能性が高められるのです。

リンクネットワークの形態は様々

一口にリンクネットワークといっても、その形態は様々です。

  • 広告代理店やSEO会社が自ら制作して用意するもの:ウェブ制作会社や広告代理店、SEO会社など、SEOサービス提供会社が自らウェブサイトを制作して、顧客の要望に応じてリンクを提供出来るように用意します。独自ドメインを取得して用意することもあれば、FC2 や アメブロなどの無料で開設できるブログサービスを活用することもあります。肝心の中身は、SEOのために用意された人間にとって価値がほとんどないものもあれば、内容を十分に作り込んだものまで、千差万別です。一般論としては、発リンク供給ソースの役割を果たせば良いという観点から総じて中身が薄っぺらなものが多いと言えます。

  • ウェブサイトを運営する外部組織と提携・協力してテキスト広告枠を確保するもの:ウェブサイトを運営するメディアと提携して、外部リンクを貼り付けられる広告枠を確保する方法です。日本国内のニュースメディアのサイドバーにテキスト広告枠を用意してもらうのがポピュラー(?)でしたが、中国やタイなど海外メディアの本文中にテキスト広告枠を埋め込む変形型、市区町村公式サイトのトップページ下部に大抵設けられているバナーテキスト広告枠をまとめ買いするなど、様々な手法が用いられています。

  • UGSL(User-Generated Spam Link):「世界中の掲示板に以下の書き込みを1回行うたびに5円」「あなたのブログにこの商品を絶賛する記事書いてくれたら500円払います」といった具合に、多数のユーザーにインセンティブを付与してリンクを貼り付けさせる手法です。これはユーザーを起点としたリンクネットワークとも言えます。

Google とスパムリンクのいたちごっこ

末期の YST (Yahoo! Search Technology)、NAVER、Ask.com や Bing といった世界のインターネット検索エンジンで比べても、Google のアルゴリズムによるスパム排除技術は優秀です。しかしながら、リンクネットワーク構築者側も Google に発見されない、駆逐されないような、巧妙な、自然に見せるリンク構築スキルを身につけてきているので、全ての不正リンクを自動的に完全排除できるわけではありません。しかし、スパムを放置し続けることは Google にとっても、検索利用者にとっても好ましいことではありません。

Google はここ数年、再三に渡りスパムリンクは同社ガイドラインに違反すること、違反したサイトの検索順位は下げられることを警告してきましたが、相変わらず、不正なリンクに手を染めるサイト運営者は後を絶ちません。

こうしたサイト運営者は痛い目を見ないと改心しないと考えたのでしょうか、ガイドライン違反はメリットがないことを徹底して周知・啓蒙していくことが必要だと考えたのでしょうか、真意はわかりませんが、2013年後半からಠ_ಠ Matt Cutts氏(Google特別エンジニア)は Twitter を使って、リンクネットワークに「制裁を加えた」ことを、時として実名を挙げながら公表するようになりました。

リンクネットワークへの制裁「公表」開始

リンクネットワークに制裁を加えるとは、すなわち (1) Google のガイドラインに違反するので、そのリンクネットワークから発信されるリンクは評価をしない、(2) そのネットワーク上でリンク売買(売り手=SEO会社やネットワーク運営者、買い手=順位を上げるためにリンクが欲しい企業や個人)に参加していたサイト運営者に、ガイドラインに違反する旨の通知を行う、という意味です。

ガイドライン違反の通知を受けたサイトは、今後も Google オーガニック検索に引き続きターゲットキーワードで検索上位に表示できる機会を得たいのであれば、再審査リクエストを行う必要があります。ところで再審査リクエストをするためには、今までに獲得した不適切なスパムリンクは全て取り除くことが必要です。これは規模にもよりますが数十万本単位でリンクを不適切な方法で獲得してきた過去があると、全て取り除くのは時間がかかります。割に合わない作業です。

米国から欧米、そしてアジアのリンクネットワークへ言及

Matt Cutts氏は、当初、単なる気まぐれでリンクネットワークを晒しているだけかと思いきや、立て続けに公表してきました。米国やロシアの業者に始まり、フランス、ドイツ、ポーランド、スペイン、イタリア、ギリシャと欧米にも言及してきました。そして、3月に私が「アジアには言及してないよね」と書いた記事を見た同氏が、ついに日本のリンクネットワークにも言及しました。

今回言及されたリンクスパムは日本のチーム(サーチクオリティチーム)が担当しているようですが、いずれにせよ Google が真剣にスパム排除のために動いていることがよく理解できます。

日本国内リンクネットワークへの影響は?

これまで同氏は、つい最近またはまもなくペナルティを科すリンクネットワークについて言及することが多かったのですが、今回は未来ではなく「過去数ヶ月」のことについて触れました。つまり、制裁を科したのは過去の話ですので、既に影響はどこかであったということになります。

同氏は「7つのリンクネットワーク」と数に触れたものの、サービス名称は明らかにしていないので、具体的にどのネットワークが同氏が想定するものか定かではありません。また、日本国内におけるスパムリンク取り締まり強化は相変わらず継続的に行われていることもあり、実際のところ、当事者以外が知る術はありません。

過去のお話ですので、該当のリンクネットワークに参加していたサイト運営者には、既に Google からガイドライン違反を指摘する通知が届いているに違いありません。該当の方は、今後もオーガニック検索に掲載させたいのであれば、過去から現在に至るまでの、あまりよろしくないリンクを取り除く作業を行って問題を解決した上で、再審査リクエストを申し込むことをお勧めします。

今後のリンクネットワークは?

ヴォラーレ株式会社の土居さんが的確なコメントをされていましたので引用しますと・・・

ちなみに今の時代にこういうような駆逐を避けながらリンクネットワークを一定以上の規模で運用するのは良い悪いではなく結構大変だと思うんですよね。よほど慎重にいくか、よほど工夫するか、開き直って大量生産大量消費な感じで回していくか。工夫して駆逐されない方向でいくなら総合的にコスト面での採算が取れるかどうかというところも焦点になると思うのですが、大量消費的な感じでの運用は体力的にしんどいかなと。[Googleが日本のリンクネットワークに制裁を与えたようです SEO HACKS公式ブログ April 8, 2014]

はい、良し悪し関係ないですよね、もう。私も同意見でして、ますますコストパフォーマンス的に割に合わなくなると思います。

近年は Facebook や Twitter、Pinterest や SnapChat などのソーシャルメディアの台頭により、ユーザーに情報を伝達・伝播・拡散する有効な手段が出てきました。こうしたメディアと、適切なコンテンツと、適切なオーディエンスを組み合わせることにより、(Google が本来評価したい)良質な自然リンク/言及を獲得することが可能になりました。

こうしたコンテンツ主導型の施策を実行することに予算を割いた方が、レンタルモデル※である有料リンクにコストを割くよりも優れた費用対効果を出せるケースが多々あります。特に英語圏では人口数(英語を駆使するインターネットユーザー数)が日本語よりも多いので、十分に割にあいます。だから SEO 業界で近年はコンテンツマーケティングなどが叫ばれるようになっているのです。日本語ユーザーは数が限られますが、それでもコストや効果的には Google にいつバレるかわからないリンクに手を出すよりも安全・確実なことが増えています。

※ レンタルモデル:一般的にリンク販売業者とは月額契約を行い、契約期間中はリンクを張ってもらえるが費用も発生する。一方で自然リンクは、(紹介や参照・共感などの理由で)ユーザーが自発的にリンクを張っているので費用は当然かからない。良質なコンテンツの継続発信はコストはかかるかもしれないが、長期的に見たら有料リンクにお金を払い続けるよりもパフォーマンスは良いのではないかというのがここでの議論です。

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1自然リンク獲得あたりのコスト比較は、2010年頃のセミナーでよく実例用いてお話していたのですが、最近は触れてませんでしたそういえば。あの話はむしろ今した方が刺さるのかしら。

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